生産力を上げるなら聞いて読め_精神科医の聴き読み日記

主にアップルのAirpodsとkindleアプリを使って「耳」で本を読んでます

三体なる中国の大SFとケンリュウ、そして幼年期の終わり

2日続けて今年のベスト5に入るのでは、という著作を聴いたのでまずはその1つ。

 

 

三体

三体

 

 

ケンリュウはもう有名な中国系アメリカ人SF作家だが、中国っぽさの無い、質の高い欧州映画を思わせる格調の高い文章と、美しいストーリーテリングが魅力的なんである。

 

ってこれはケンリュウではなくて、中国人が書いた小説として(アジア人としても)初のアメリカSF界の大賞たるヒューゴー賞を受賞した作品。

 

あのオバマ大統領も就任中に読み、これを読んでいれば、つまらない政界のことから気を紛らせられると語ったそうな。

 

さて、訳者に大森望氏が入っていることにあれ?と思う人はSF通だろう。英語からの訳者じゃないの?と。まあそこは込み入った事情があり、あとがきに詳しいが、中国語を解さない大森氏が訳者になるということもあるのだ。

 

で、それはともかく、このSFはすごい。

何がすごいって、そのスケールと、SF足りうる仕掛け、とそして文章というか、描いている世界観の美しさ。

 

ストーリーはそのモチーフとして、アーサー・C・クラークの「地球幼年期の終り」があるでしょう、と思っていたらそれは案の定というか、著者のお気に入り作家のようだ。クラークさん、生きているうちに会えず残念。

 

ともあれ、これは地球幼年期と同じく、地球と異なる世界からの住人の初めての邂逅を描く作品です。そういうのが好きな人は是非。

 

冒頭、こんな始まり?と思わせる、あの中国の文革時代の話から読ませます。

 

 

The Three-Body Problem

The Three-Body Problem

 

 

英語版ですね。実は「三体」は三部作。

英語ではもう3部の終わりまで出ていて、次の作品は「The Dark Forest」、最後は「Deth's End」。うーん、読みたいが長いんだよなあ。それにしても邦訳に何年かかっているのか。

 

The Dark Forest (The Three-Body Problem Book 2) (English Edition)

The Dark Forest (The Three-Body Problem Book 2) (English Edition)

 

 

io9.gizmodo.com

 

Amazonが巨額をつぎ込んで映画化するのを進めているらしいんですよね。実に楽しみです。

 

 ケンリュウといえばこれ。15もの短編集。

 

この人の書く文章がまた美しい。

中国系作家と言っても日本も好きでいてくれるのでしょうか?極めて英雄的な行為をする日本人も出してくれますよ。日本を誤解せず正しく、日本人作家以上に過去を懐かし得るように書いてくれている。有難うって感じ。

 

ちなみに私一押しは「円弧」。

不老の技術が発達した中で、その技術の恩恵を受けて若さを保つ女性と、その技術開発者なのに薬が合わずに早逝する夫。若いままでいる主人公と、かつての事情から捨てたために離れて育った、そして不老技術の恩恵を拒否する息子との出会い。

 

さて、美しいSFといえば何よりもクラークの「幼年期の終り」だろう。

 

 

もうね、これがベスト・オブ・ベストですよ。SFの。

どんな人にも勧めたい本です。

 

異星人との邂逅話なんですが、あるとき地球に到来して、圧倒的軍事力のデモンストレーションによって地球内の争いを停止させ、かといって武力で地球を支配するでもなく、地球人をある方向性へと導いていく話。

最後には驚愕すること必至。

 

 

新装版 果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

新装版 果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

 

 

美しいSFといえばこれも話題に出しておかなくては。

 

私にとっての小松左京といえば、あのつまらない映画「惑星ジュピター」でしたが、本書を読んで評価は180度回転。

 

読まないと。

 

 

小早川秀秋、小山田信茂、八甲田山

 今日はAmazonにreview書いているのから3つ選んでみました。

 

我が名は秀秋

我が名は秀秋

 

 

あの「裏切り者」小早川秀秋を主人公にした小説。珍しい。


関ヶ原の陰の主役と言ってもいい秀秋。東軍西軍膠着状態にあった中、西軍方の松尾山に陣取った秀秋が大谷吉継に突っ込んだその裏切りによって西軍の敗北が決定的となり、翌日には石田三成居城佐和山城を陥落せしめた秀秋。刑場においてその裏切りを三成に罵られた秀秋。関ヶ原後2年、わずか21歳で死んだ秀秋。徳川方からも石田方からもどっちからでも悪くしか描かれない秀秋。「真田丸」では悪者としては描かれないがともかく気が弱そう。でも「葵,三代」では感情がよく見えない一方、中立的な描かれ方だったかな。

そんな誰に聞いても好感持たれない秀秋さんですが、戦国初心者の身としてはもともと疑問があったんですよ。
例えば、何故こんなやつが秀吉にも見込まれて養子になったのか、その後名将小早川隆景の養子としてどんな生活を送ったのか(いや情けない奴が隆景の養子に成りえたのか?)、何故西軍を裏切ったのか?(一次つなぎとはいえ、三成から関白が保証されていたのに...)、そんなやつだったらその軍勢も弱いんじゃないの?(大谷吉継の軍勢蹴散らすほどだったんだ?)そして,何故21歳で死んだのか??

この小説は当然主人公ですからね、よく描かれています。才能あったからこそ秀吉に見込まれ、隆景にも見込まれ、そして三成側に与さない最大の理由としては、兄同然だった秀次の死が絡んでいると。

小説としてはとても面白かったです。
でもちょっと天才として描きすぎかもしれませんね。

早すぎる死の原因については、小説は置いておいて、Wikipediaを見ると、アル中で肝硬変で死んだみたいに書かれているが、それもなんだかなあ。21歳で肝硬変になるアルコールの飲み方って普通は無いでしょう、と思うし。勿論アルコール関連の別な疾患は有りうるが。当時のことだからそれこそ急性膵炎でも起こせば死んだだろうし。劇症肝炎で死んだのかもしれん。

うーん、秀次にしろ秀秋にしろ、よく描かれては困る人たちによる隠された歴史がありそうで、真実がどうなのかわからないところに面白さがあるというか、でも釈然とはしないなあ。

 

 

関ヶ原 Blu-ray 通常版

関ヶ原 Blu-ray 通常版

 

 

こちらでは東出昌大が秀秋でしたね。「真田丸」よりはずっとかっこいい。

 

 

小山田信茂 (人物文庫)

小山田信茂 (人物文庫)

 

 

小山田信茂といえば裏切り者のイメージ。

 

織田に攻められ、逃避行の中の武田勝頼が最後に頼ったのにそれを裏切り、滝川一益軍が間近に迫る中、自害に至らせた究極の裏切り者。実際、様々な作品でこの人ほど悪く、卑しく描かれる人もいない。ドラマ真田丸でも、狡猾でかつ、情けない人物として描かれた。宮下英樹の「センゴク」シリーズでは悪く描かれないまでも、ブ男。

 

しかしどうやら小山田一族というのは美麗だったらしく、また卑劣な人間ではなく、家康を敗走させた三方原の戦いで先鋒を務めたように軍事的にも勇壮であったらしい。勝頼を裏切ったイメージがあまりにも強いが、小山田方から見れば、勝頼は残酷な君主であり、勝頼を匿うことにより艱難辛苦を舐めるのは領民であり、実際信茂が裏切ることによって、領民は苦しみを免れた。もちろん、彼自身は首を取られることの覚悟があった上での行動であったなら...それは悪行とも言い難いのですよ。ものの見方は立場によって変わります。戦国時代の武将への新たな視点を提供してくれました。

 

 

 

武田に使えることになった女の子、レイリを描いたこの漫画では小山田信茂が良く描かれてましたね。あぁこういう人だったのかも、と思わせる。

 

 

八甲田山 消された真実

八甲田山 消された真実

 

 

映画「八甲田山」を見た人なら、徳島大尉に憧れたことだろう。高倉健演じる徳島は冷静沈着、用意周到で、寡黙ながら思いやりを感じさせた。

 

ところがどっこい、

 

資料を丹念に調べると全く正反対だったりする。

この企画そのものが福島氏(映画では徳島)の出世欲と虚栄によって成立した側面もあるようだ。ただ確かに冷静沈着で用意周到ではある。案内に立った地元の村人への扱いが苛烈極まることが映画との決定的な相違で、村人たちは後遺症に苦しめられ、悲惨な余生を送った者もいたという。

 

もう一方の神成大尉たちのダメさは言うに及ばず。著者は現役自衛官時代に八甲田山の雪中行軍を実体験しているのでその経験も活かした叙述には信頼を置けるように思う。資料も丹念に読み込み、映画や新田次郎の小説との相違を次々指摘する。幻滅すること請け合いだが、興味持った人は読むべき。それにしても現在も青森第5連隊や弘前31連隊が競うように雪中行軍をしているとは面白い。

 

 

 

映画ですよ。徳島大尉の真の姿を知ってしまうと興ざめではあるけど、青森第五連隊の皆さんが次々に死んでいく後半の光景が忘れられない..。

 

 

ストーカー、徴兵制、家康、関ヶ原

 

ストーカーとの七〇〇日戦争

ストーカーとの七〇〇日戦争

 

 

小豆島でストーカー被害にあった作家さんのストーカーとの闘争記。内澤さんの素晴らしいのは加害者への治療に言及していること。そしてそれは決して優しさなどからではなく、どちらにしても出てくるのだから安全な状態になってくれないと安心できない、だからこその加害者への治療希望なのだということをしっかり書いている。うん、これって有期刑になるほぼあらゆる犯罪に当てはまるよなあと。罰って応報感情以外になんのメリットも無い気がするんですよ、個人的には。だから出すなら安全な状態に、というのは必然の帰結なはず。このストーカーさんは著者につきまといつつも、うつ病として治療を受けていたとかで、そこらへんは精神科医にとっては耳の痛い記述もあります。自分の患者さんがそういう行為に至りそうだったらどうしようとは確かに思いますよ、精神科医としてはね。

 

 

21世紀の戦争と平和: 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか

21世紀の戦争と平和: 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか

 

 

三浦瑠麗氏の話題作ですね。

徴兵制というと、とにかくきな臭く感じるのが普通でしょうが、福祉先進国として平和イメージで語られる北欧では結構されているんですよね。特にスウェーデンで復活したりってのは興味深い。

まあ、我が身のこととして、また息子がいる親として考えると、徴兵されるのは基本的には嫌ですよ。そりゃ。日本が他国の戦争に積極的に関与するのは考えづらいが、国際協力の名のもとに危険地域に行く可能性もあれば、国内の大災害救助で危ない目にあう可能性もある。

とはいえ、この国の一国民として、今の人口の大急減社会がもたらす当然の帰結、すなわち「自衛隊希望の若者の実数が減り、それにより優秀な自衛官が減り、国防を担うに十分な資質を持った自衛官が圧倒的に足りなくなるであろう」という現実を考えると、それはどうにかしなきゃと考えざるを得ないわけで...。

三浦氏が記すように、軍なるものは決して戦争を待ち望んでいるのではなく、むしろアメリカのパウエル軍参謀長がハト派だったように、実際にはシビリアンのほうが戦争に向かっていく雰囲気を作ってしまうことはあるわけですよ。軍はそれこそ「我が事」だから、十分な意味のない戦争に向かうことなど考えるわけもない、ということで...確かに自分や家族が戦地に赴いて死ぬ可能性が現実になったとき、戦争に行くかの判断は軍なればこそ慎重になるでしょうねえ。人口減少社会と併せて考えると、徴兵制は一度はしっかり社会で考えるべきテーマかと感じました。

 

そんなの物騒で絶対考えられない!という人はとりあえずこちらを読んで、人口減少の怖さを知ってから本書を読むと良いと思いますよ。

 

 

 

人口が保てないと、治安が保てない、というのは盲点かと。

田舎だから捨てればいいや、ではないのがわかります。

 

 

家康 (一)自立篇

家康 (一)自立篇

 

 

家康(二)不惑篇 (幻冬舎単行本)

家康(二)不惑篇 (幻冬舎単行本)

 

 

家康、はっきりいって好きです。いや大好きってわけじゃないけど、家康がいなかったら明らかに今の日本はないと感じるわけで、信長⇛秀吉⇛家康と続いたあの権力移動は歴史の奇跡でしょう。

そんな家康の10代から30代までのまだ若い時期を描くこの2巻。いやとてもいいんじゃないでしょうか。築山殿との関係が単に悪いというのではないのが新鮮に感じましたよ。ま、結局は死なせちゃうわけですが。

安部さんがどれだけ史実を参考にされたか知りませんが、双子に関する当時の偏見というのかな、忌み嫌う意識がこの本に記されているくらい強かったなら驚きです。

本当なんですかね。かわいそうに。

senjp.com

でも、そうでもないと、家康は秀康に3歳になるまで会わなかったとか説明つかない気も。

ともあれ、2巻は信長の命によって築山殿と長男信康切腹のあたりまで、です。物語の前半家康と相思相愛だった於万の方とも、秀康誕生を機に全く繋がらない状態になるのもやるせない気にさせられます。

 

 後年出奔する石川数正がどう描かれるのかに興味ありますね。本作ではとにかく切れ者で、それゆえかそのクールな言動が家康には感情的に受け入れられない心情を強めていくという...。楽しみです。

 

ところで、家康を描いたドラマと言えばNHK大河の「葵三代」が素晴らしいですよ。どうにかして観るのをお勧めします。ドラマ中、津川雅彦演ずる家康、実に良いです。もっとも主人公は西田敏行演ずる秀忠ですが。いや若き秀忠のダメっぷりと来たら...愛らしいことこの上ない。最初が関ヶ原から始まるってのも素晴らしすぎる。合戦の迫力は、この間の映画の「関ヶ原」よりよほど凄い。予算、凄かったのね...

 

 

関ヶ原 Blu-ray 通常版

関ヶ原 Blu-ray 通常版

 

 こっちも悪くはないですけどね。でもね、司馬さんの「関ヶ原」原作って個人的には好かんというか。司馬さんてもちろん面白いのですが、ディテールの細かい真実っぽい作り話が散りばめられていて嫌いです。

 

関ヶ原(上中下) 合本版

関ヶ原(上中下) 合本版

 

 長い「関ヶ原」は、もうこの合本を買って、AirPodsで聞くしかないでしょ。

 

とんでもない死に方について

 

とんでもない死に方の科学: もし○○したら、あなたはこう死ぬ

とんでもない死に方の科学: もし○○したら、あなたはこう死ぬ

 

 

単純に面白い。

 

飛行機乗っているときに窓が割れたら?、ホオジロザメにかじられたら?、ハチの大群に襲われたら?、乗っているエレベーターのケーブルが切れたら?、クジラに飲み込まれたら...などなど様々な状況下でどのように死が訪れるのか、これでもかと解説45個!

 

ワタシ的にもっとも良かったのは、無数の蚊に刺されつづけたらの章。

 

まあ蚊といえば思い出すのは椎名誠の書いた本にあった記述ですよ。

世界3大蚊の辛い場所としては、シベリア、アラスカ、アマゾンだったような...とにかく蚊に刺されまくるのが辛く、蚊玉ができると。つまり動物を刺している蚊がぼわっと玉のように見えると(ココらへん私の記憶によります)。

 

で、蚊が1回に吸う血液量は5マイクロリットル。

1ミリリットルの200分の1ですね。すっごい少ないのはご存知の通り。

 

でも塵も積もれば山となる、というわけで、蚊の大群に囲まれ吸われ続けると...

 

実は蚊に刺されまくるとわずか15分で血液の15%を失う。これは勇気ある(?)研究者が北極圏でおびただしい蚊に刺されまくったとき、1分間に9000回も刺されていたという実験からの推測。

 

9000x5=45000マイクロリットル=45mlですね。結構な量ですよこれは。

 

ま面倒なので50mlとして、15分で50x15=750ml。

 

おっともう血液量(5リットル)の15%だ。

 

30分で血液の30%。血圧低下と心拍上昇、手足のチアノーゼが襲ってくる。

 

45分で喪失する血液は2リットル以上。こうなるともうショック状態だ。脳が必要とする血圧も維持できなくなる...

 

ということで、無数の蚊に刺されたままでいると、1時間以内に死ねるらしい...

 

 

蚊學ノ書 (集英社文庫)

蚊學ノ書 (集英社文庫)

 

 すさまじき蚊の体験談を知りたければ。

AirPods 洗濯しても大丈夫だった件

あぁ更新がとても遅くなってしまった。結局夜寝てしまうのがいけないんだが...いや夜は寝るものではあるけれど..

 

さて、改めて我が身から外せないAirPodsですが、防水対応を謳っていないところで、ライバルに対する欠点とされたり、次にはそうせい、と望まれたり。

 

でも声を大にして言いたいのですが、洗濯しても大丈夫(かも)。

 

なにせ私が洗濯してしまったんですから...

 

こりゃあ駄目だと新品を衝動的に注文しそうでしたが、思いとどまって使ってみると全然問題なかったりします。

 

なぜ防水を謳わないのか不思議。というか謳わないのに洗濯しても大丈夫に作ってくれてて感謝。

 

ただ、まあ一応乾かしてから使いましょう。

 

hitoreal.info

 

 

雪男、ツアンポー、凍てつく太陽

探検家、角幡唯介氏の本を続けて読む。

 

blog.goo.ne.jp

 

角幡氏は、中国の峡谷ツアンポーに挑んだことで有名?なのかな。

私の2歳年下で、正直私の世代でいわゆる「探検」を志して実行可能なんだ、と思ったりもする。要は探検なるもので功成り名遂げる遂げるにはもう遅いんじゃないの?と思っていたら、出来ているのね、と。

 

氏が早稲田の学生時代に一定程度の業績を上げたツアンポー峡谷探検だが、朝日新聞社の記者を辞めて再度挑もうとしたツアンポーの前に誘われたのが、かのヒマラヤの雪男探索隊という。

 

 角幡氏のスタンスとしては、そもそも雪男なんていないでしょ?というもので、まあまあ読む側としては安心して話に入っていけるわけですよ。これがビリーバーさんだとしたらかなり辛い。しかしそんな角幡氏も、雪男探索隊の男たちの熱量に接するうちに、やっぱりいるかもという気持ちになっていく。読み手としても、最初がビリーバーさんでない立場である角幡氏の気持ちに寄り添いやすい。

 

で、行けばまあそれらしい現象たるやあるわけで。

遠征隊の成果はこちらのリンクにもある足跡だという。

 

www.afpbb.com

 

その上で、角幡氏は、遠征隊の後1人で雪男探しを続けるわけですよ。さすが探検家。

 

で結局はだんだん熱量が下がっていく。それらしい足跡があったとしても、それはカモシカだったりしたわけで。その気持ちの下がりにも読み手はついていきやすいので、あぁやっぱり居ないよね、と安心できます。

 

現実雪男というのはやはりファンタジーの世界で、その一番の証左は地元の人達が存在を見たことが無いということに尽きる。何年かに1回しか来ない外国人だけがその存在を感じて信じ込むってやはり無理があるでしょう。

 

尚、そういった角幡氏の気持ちの動きを知った後としても、本書は面白いですよ。

雪男目撃者たちの、信じていなかったものを信じ込む過程、それにかける情熱、信じるあまり死に至った日本人探検家の話。どれも心に染みます。

 

そんな角幡氏の雪男探索をした後にでかけた本命ツアンポー峡谷探検記がこちら。

 

 

www.faust-ag.jp

 

すげえな、ツアンポー、と思う。

当然生きて帰ってきたから本があるわけだけど、探検の最後に予定が狂って生死を彷徨う場面があり、今どきこんな探検を2010年という最近にもできたんだと驚嘆しつつもハラハラします。

 

凍てつく太陽

凍てつく太陽

 

 2019年、このミスの話題作。

第二次大戦末期を舞台にしたミステリーで、主人公は特高警察官。特高警察で思い出すのは手塚治虫アドルフに告ぐ、だったりするが、いずれにしても良い描かれ方してこなかったのが大部分と思う。しかしこの主人公はそんな先入観とは違い、真面目で優しい。そしてこれが物語の肝なんだけど、アイヌの血が入っている。戦前戦時中、アイヌ民族がどのように周囲から見られ、また彼らがどのように大和人になろうとしていたか、主人公の目を通して何となく当時の空気がわかります。今の自分の感覚では、アイヌなのかどうかとか気にすること自体がよくわからないが。

 

アドルフに告ぐ 1
 

 

そしてミランダを、ベルリン、絶叫、君主論

年末から年始にかけてはこの4冊ほど。

 

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

 

今年のこのミス海外編2位ですよ。うん、面白かった。登場人物それぞれの視点から語られる形式。

しかし、読み上げで、章ごとに視点が変わるのはきつい。今章が変わった、というのが分かりづらくて混乱することがままあったり。まあ注意してれば誰視点に変わったかはわかるとはいえ。

 

IT企業社長のテッドは、たまたま空港のバーで知り合った女性リリーと妻殺しを語ったらなんと後押しされてしまうという。ちなみに妻の名がミランダ。

 

キーワードはサイコパス、かな。いや猟奇殺人は無いですけどね。

 

中盤、ほんとにええぇ!と驚きます。

 

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)

 

 こちらはこのミス国内編2位。

 

舞台はベルリン。第二次世界大戦終結後間もなく。ベルリン陥落は1945年5月。だからまだ日本は連合国に降伏していない時期だね。

 

主人公はドイツ人少女、17歳かな。アメリカ軍の食堂で働いている。共産党にいたため迫害された両親を持つ。そしてベルリン陥落後街を蹂躙したソ連兵にレイプされた過去も持つ。

 

そんな彼女が、恩人の死をきっかけにソ連軍人から人探しの任務を嘱託され、会いに行くまでの2日間の冒険譚。

 

読後感はいいですよ。お勧め。

 

よくぞここまで、と作者は敗戦後のドイツを臨場感を持って描いている...って当事者の方が読んだらどうなんだろう。

 

当時のベルリンは、3カ国(アメリカ、イギリス、そしてソ連)に分割統治されていたのだ。それぞれ連合国間の思惑を元に住民が翻弄されることもあったのだろう。日本がアメリカ一国の占領支配になったのは本当に良かったと思う。

 

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

 

 

こちらは何となく選んでみて。

 

都内マンションの一室で孤独死の状態で発見された鈴木陽子。その一女性の半生が描かれるのだが...

 

いやあ暗かった。

この本も基本一人称形式で視点が章ごとに変わりますな。でも、主人公視点の時は何故か二人称形式(あなたは...する)で、聞き読みしているといつの間にか、自分が本の世界に居るかのような錯覚を起こせますよ。

 

こっちもキーワードはサイコパスといって良いのかなあ。主人公の気持ちをなぞることは容易なれど、実際には実行せんでしょうということをやってくれます。

 

もう一つのキーワードはあの国民的作家(女性)のあの作品だけど、読んでいない人には秘密にしとくべきかな。

 

しかし、どっかで良い選択できたことがあったはずなのにねえ、と。人生の困難を改めて考えます。

 

よいこの君主論 (ちくま文庫)

よいこの君主論 (ちくま文庫)

 

 

 架神さんの作品なので、もちろんユーモアたっぷりです。

 

マキャベリ君主論を説明するのに、舞台のお膳立てを小学校5年生の教室とし、主人公ひろし君が如何にしてクラスメイトを支配していくかが綴られます。

 

5年3組を舞台とした戦国時代を彷彿とさせる群雄割拠。

 

マキャベリ君主論の中では、冷酷非道なことをするのは1回だけ、とかなるほどと感じますな。

 

 

サイコパスの真実 (ちくま新書)

サイコパスの真実 (ちくま新書)

 

 サイコパスについて知りたければこちらかな。中野信子氏の方もあるけど、私は嫌い。

 

でもね、サイコパスって診断名じゃないんですよ。それに発達障害的特性を考えての視点がどの解説本読んでいていも無くて、非常に不満です。なかなか書くのが難しいとは言え。

 

 

ベルリン陥落 1945(新装版)

ベルリン陥落 1945(新装版)

 

 ベルリン陥落についての本といえば。未読ですが、旧版を持ってます。新装版は高いな...。

 

それにしてもベルリン陥落時のソ連兵の暴虐は本当に信じ難いくらい。もし日本が降伏後、連合国の分割統治に遭ったりしていたら...と歴史の綾に震撼してしまう。

 

太平洋戦争 最後の証言  第二部 陸軍玉砕編 (角川文庫)

太平洋戦争 最後の証言 第二部 陸軍玉砕編 (角川文庫)

 

でも実は北海道が降伏後の混乱の中で、本当に占領されていたかもしれないってのはあるのですよ。そうならなかったのは、前線で撤退せずに頑張ってくれた陸軍兵士のおかげ。千島列島最北端は占守島で踏ん張ってくれた兵士たちが居たことは忘れてはいけないのでしょう。

 

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

 

 架神さんの本で一番好きなのはこれです。

 

キリスト教初期ってどうだったの?とか、聖書って残酷じゃない?矛盾だらけじゃない?とか思った人で、キリスト教徒以外の人は、全編笑えること必至。

 

ちなみに私はR教学園というキリスト教の学校で小学校〜高校と過ごした。礼拝が毎日あったり、食事の前は「主の祈り」を唱えたり、クリスマスは英語のクリスマスソングを歌ったり、と今思えば、キリスト教徒でも無い私にとっては貴重な経験。おかげで欧米人の思考法もなんとなく想像つく。

 

しかし、小学生だった私でさえ、「旧約聖書」の神様の残酷さと「新約聖書」の福音書の矛盾だらけの記述はおかしいんじゃないの?と疑問に思っていたくらいです。

 

架神氏の最終章「出エジプト」は、聞き読みしているとそのおかしみと迫力に圧倒されますよ。