生産力を上げるなら聞いて読め_精神科医の聴き読み日記

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四国の雄、長宗我部元親、戦国の大谷翔平たる信親、そして盛親

どうにもこの頃戦国づいてしまっているので、blog紹介も偏りがちだが...

 四国の雄といえば、長宗我部元親

 

南海の翼 長宗我部元親正伝 (集英社文庫)

南海の翼 長宗我部元親正伝 (集英社文庫)

 

 

四国の覇者たらんとした元親の家督を継ぐまでの様子がかなり素敵だったりする。

 

元親は大柄な美少年。武芸に嗜むでもなく、部屋にこもっていた引きこもり。故に「姫若子」とまで呼ばれていたのが、初陣にて槍の使いを習うや瞬く間に勇を奮い、一気に家臣団の心をつかむという。

 

土佐の国を豊かにしたい一途な若者が、家臣と謀(はかりごと)を企んでいくうちにいつしか暗い面持ちになっていく。しかし、それでも彼が嫡男信親を失うまでは理性が勝っていたのだが...最後は暗い終わりになるのが辛いところ。

 

漫画で知りたければまずは「センゴク一統記」9巻を。

 

子、信親のことを知りたくば「センゴク権兵衛」4巻。

 

 

なにせこの信親さんたらば、背は高く美少年なのは父元親譲りな上に、元親の英才教育によく応え、武芸にも文芸にも達者で、性格もピカイチ。家臣はもちろん領民ことごとく接する人間は彼に好感を持ってしまう。

 

いや,誰それよと思ったら現代には大谷翔平がいるじゃん、と思ってしまう。まさにあんな人っぽい。

 

この信親、残念ながら22歳にて非業の死を遂げてしまう。

 

時は、秀吉の九州征伐、島津氏との戦。戸次川の戦い。仙石権兵衛(秀久)が無茶な戦いを挑んだせいで、島津氏の策に乗っかり深入りした格好になった長宗我部隊。信親は奮戦虚しく討ち死にを遂げてしまう。*1

 

その場面、「南海の雄」においても「センゴク権兵衛」でも涙なくしては読めないが、とにかくこんな完璧な子を亡くした元親の嘆きっぷりは物凄かった。

 

元親のそれ以後ときたら...それまでは慈悲深く、家臣の尊敬に値する沙汰をしてきたというのに、謀を繰り返してきた故もあってか猜疑心が一層強くなり、冷酷な処断を次々にしていく。あろうことか、次男・三男を嫡子にするのではなく、四男盛親を嫡子にしてしまい家内を混乱させ、さらに信親の娘を盛親の嫁にしてしまう。その変わりようは、漢を興した劉邦晩年や、呉の孫権の晩年に匹敵する感じ。

 

そんな狂ったとしかいえない元親に後継指名された盛親さん。

 

実は「南海の雄」はそんな盛親が影の主人公。

 

盛親は、家督を継いだ後、関ヶ原の戦いでは西軍についたは良いが、戦闘機会をつかめず撤退、その後家康に改易されてしまう。領地を失った盛親は京都伏見でなんと寺小屋の先生となってしまう。

 

そのままなら徳川方に警戒されつつも安穏な人生を送れたのにね...

 

15年もそうしたのち、天下は最後の動乱を迎える。徳川が秀吉の遺児秀頼を倒すべく興した大阪の陣。

 

盛親はその大阪の陣に参陣。そして知っての通り奮戦した挙げ句、最後は伏見にて処刑されてしまう。小説ではそこまで描いてないけど...。

 

元親は、どうやら最初は土佐の国だけを豊かにすべく領地拡大を考えた...と描かれることが多い。でも、器量がある分、いつの時点か、四国統一を考え、それが後の凋落につながってしまうとも言える。そこまで考えなければ、秀吉とも争わず、一大名として後の時代にもずっと残ったのでは、と思うのだが。その実力、中途半端だったのか、それとも生まれた土地が悪かったのか、時勢が味方しなかっただけなのか、よくわからず、というのが正直なところ。

 

合本 夏草の賦【文春e-Books】

合本 夏草の賦【文春e-Books】

 

 

長宗我部元親といえばどちらかといえばこちらの方を読む人が多いでしょう。司馬さんですから。

 

でもこっちの元親はどうにも感情が無い存在という感じ。感情移入するなら天野純希かな。 

 

 

桃山ビート・トライブ (集英社文庫)

桃山ビート・トライブ (集英社文庫)

 

 

天野純希のすばる新人賞受賞作。

秀吉の窮屈な世(天野純希は秀吉治世が嫌いらしい)を三味線ロックバンドで席巻していくという。

 

影の主人公は、秀吉の後継に一時なっていた豊臣秀次、と思う。

 

 

北天に楽土あり: 最上義光伝 (徳間時代小説文庫)
 

 

伊達政宗を知っていれば、男勝りの母親義姫の兄、最上義光(よしあき)の存在はどちらかといえば憎まれ役といったとこだろう。山形を発展させて最上氏は実は領民にとってとても良い領主であり、極めて優れた人だった。

 

最上義光も実は長宗我部元親と似たところはあって、先見の明あり、山形領内を良く統治すると共に、天下の趨勢をよく見極め、甥の伊達政宗と異なり、いち早く秀吉に臣従した。しかし、その後秀次の世が来ると踏んで、愛する娘駒姫を嫁がせたら、途端に秀次は失脚、秀次にまだ会ってもいない駒姫は粛清されてしまう。さらに、子どもへの家督相続を遅らせたら家康に嫡男廃嫡を指示されそれに従ったところ、元親とよく似た悲劇に襲われてしまう。さらに、義光自身は穏やかな最期を迎えるものの、その後の最上氏は後継争い絶えず、結局最上家は大名ではなくなってしまうのである。

 

なんとも最後が切ない最上氏...。  

 

*1:ちなみに何故仙石権兵衛秀久はそんな無茶な戦いをしたのか。小説と漫画では描き方が全く違ってますよ。