生産力を上げるなら聞いて読め_精神科医の聴き読み日記

主にアップルのAirpodsとkindleアプリを使って「耳」で本を読んでます

小早川秀秋、小山田信茂、八甲田山

 今日はAmazonにreview書いているのから3つ選んでみました。

 

我が名は秀秋

我が名は秀秋

 

 

あの「裏切り者」小早川秀秋を主人公にした小説。珍しい。


関ヶ原の陰の主役と言ってもいい秀秋。東軍西軍膠着状態にあった中、西軍方の松尾山に陣取った秀秋が大谷吉継に突っ込んだその裏切りによって西軍の敗北が決定的となり、翌日には石田三成居城佐和山城を陥落せしめた秀秋。刑場においてその裏切りを三成に罵られた秀秋。関ヶ原後2年、わずか21歳で死んだ秀秋。徳川方からも石田方からもどっちからでも悪くしか描かれない秀秋。「真田丸」では悪者としては描かれないがともかく気が弱そう。でも「葵,三代」では感情がよく見えない一方、中立的な描かれ方だったかな。

そんな誰に聞いても好感持たれない秀秋さんですが、戦国初心者の身としてはもともと疑問があったんですよ。
例えば、何故こんなやつが秀吉にも見込まれて養子になったのか、その後名将小早川隆景の養子としてどんな生活を送ったのか(いや情けない奴が隆景の養子に成りえたのか?)、何故西軍を裏切ったのか?(一次つなぎとはいえ、三成から関白が保証されていたのに...)、そんなやつだったらその軍勢も弱いんじゃないの?(大谷吉継の軍勢蹴散らすほどだったんだ?)そして,何故21歳で死んだのか??

この小説は当然主人公ですからね、よく描かれています。才能あったからこそ秀吉に見込まれ、隆景にも見込まれ、そして三成側に与さない最大の理由としては、兄同然だった秀次の死が絡んでいると。

小説としてはとても面白かったです。
でもちょっと天才として描きすぎかもしれませんね。

早すぎる死の原因については、小説は置いておいて、Wikipediaを見ると、アル中で肝硬変で死んだみたいに書かれているが、それもなんだかなあ。21歳で肝硬変になるアルコールの飲み方って普通は無いでしょう、と思うし。勿論アルコール関連の別な疾患は有りうるが。当時のことだからそれこそ急性膵炎でも起こせば死んだだろうし。劇症肝炎で死んだのかもしれん。

うーん、秀次にしろ秀秋にしろ、よく描かれては困る人たちによる隠された歴史がありそうで、真実がどうなのかわからないところに面白さがあるというか、でも釈然とはしないなあ。

 

 

関ヶ原 Blu-ray 通常版

関ヶ原 Blu-ray 通常版

 

 

こちらでは東出昌大が秀秋でしたね。「真田丸」よりはずっとかっこいい。

 

 

小山田信茂 (人物文庫)

小山田信茂 (人物文庫)

 

 

小山田信茂といえば裏切り者のイメージ。

 

織田に攻められ、逃避行の中の武田勝頼が最後に頼ったのにそれを裏切り、滝川一益軍が間近に迫る中、自害に至らせた究極の裏切り者。実際、様々な作品でこの人ほど悪く、卑しく描かれる人もいない。ドラマ真田丸でも、狡猾でかつ、情けない人物として描かれた。宮下英樹の「センゴク」シリーズでは悪く描かれないまでも、ブ男。

 

しかしどうやら小山田一族というのは美麗だったらしく、また卑劣な人間ではなく、家康を敗走させた三方原の戦いで先鋒を務めたように軍事的にも勇壮であったらしい。勝頼を裏切ったイメージがあまりにも強いが、小山田方から見れば、勝頼は残酷な君主であり、勝頼を匿うことにより艱難辛苦を舐めるのは領民であり、実際信茂が裏切ることによって、領民は苦しみを免れた。もちろん、彼自身は首を取られることの覚悟があった上での行動であったなら...それは悪行とも言い難いのですよ。ものの見方は立場によって変わります。戦国時代の武将への新たな視点を提供してくれました。

 

 

 

武田に使えることになった女の子、レイリを描いたこの漫画では小山田信茂が良く描かれてましたね。あぁこういう人だったのかも、と思わせる。

 

 

八甲田山 消された真実

八甲田山 消された真実

 

 

映画「八甲田山」を見た人なら、徳島大尉に憧れたことだろう。高倉健演じる徳島は冷静沈着、用意周到で、寡黙ながら思いやりを感じさせた。

 

ところがどっこい、

 

資料を丹念に調べると全く正反対だったりする。

この企画そのものが福島氏(映画では徳島)の出世欲と虚栄によって成立した側面もあるようだ。ただ確かに冷静沈着で用意周到ではある。案内に立った地元の村人への扱いが苛烈極まることが映画との決定的な相違で、村人たちは後遺症に苦しめられ、悲惨な余生を送った者もいたという。

 

もう一方の神成大尉たちのダメさは言うに及ばず。著者は現役自衛官時代に八甲田山の雪中行軍を実体験しているのでその経験も活かした叙述には信頼を置けるように思う。資料も丹念に読み込み、映画や新田次郎の小説との相違を次々指摘する。幻滅すること請け合いだが、興味持った人は読むべき。それにしても現在も青森第5連隊や弘前31連隊が競うように雪中行軍をしているとは面白い。

 

 

 

映画ですよ。徳島大尉の真の姿を知ってしまうと興ざめではあるけど、青森第五連隊の皆さんが次々に死んでいく後半の光景が忘れられない..。